二、御三家と下僕の契約事項、注意書き

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「なんで溜息? 私そこそこ頭良いから勝てなくても落ち込むことないよ痛たたたた」 「うぜーなお前は。別にんなことどーでもいいわ。総から連絡来たんだよ、生徒会に呼び出されたって」 「ふぇ? 松隆くんがリンチされるってこと?」 「なんでお前の中で呼び出しはリンチなんだよ。どう考えても文化祭プログラムの話だろ。俺達も来いってさ」 「なるほどー。分かったので放してくれませんか?」  私の頬を引っ張っている手を指して抗議すると、一際乱暴に引っ張られた。 「痛い痛い痛い」 「まー、お前が俺達お抱えの下僕ってことはアイツらも知っての通りだろうし、御三家と下僕が参戦するって伝えるか」 「分かったから放して放して」 「まぁこれ考えたのが誰だかは知らねぇけど、多分考えたのは鹿島で実行すんのは笛吹だなー。企画役員が文化祭担当してるし」 「桐椰くん桐椰くん、私の頬が伸びてしまいます、」 「お前、笛吹に恨まれてそうだから気を付けろよ。ガン飛ばしたりすんなよ」 「いいから放してください!」 「それから、そのうぜぇキャラ隠せよ」 「分かりましたっ」  漸く手を放してくれたけれど、伸びきった頬がじんじんしている。女子相手にすることじゃない。 「じゃ、行くか。丁度クラスの話し合いも終わったみたいだしな」  本当にクラスにノータッチ。黒板を一瞥し、桐椰くんは相変わらず軽そうなカバンを掴んで出て行った。しかも「行くか」とか言ったくせに、私を待つ気など毛頭ないと言わんばかりの態度。  やれやれ、と私こそ溜息をつきながら立ち上がると──みんなの視線を感じる。とても気まずい。ここで振り返っても、目が合ってしまった誰かが気まずく顔を背けるんだろう……と思うと、無視する気しか起こらない。桐椰くんほど堂々とではないけれど、私も教室を出た。
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