二、御三家と下僕の契約事項、注意書き

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「じゃあ梅宮もったいねぇなー。無名役員にならないであのまま桜坂にくっついときゃ今頃御三家の仲間入りだろ」  その名前に反応した私に、桐椰くんは嘲笑を向けて見せる。 「なぁ梅宮?」 「……まぁ。でも、あの時はそんなこと分からなかったし」 「ていうかー、あんまり生徒会の悪口言わないでねー? 一応、私は希望役員だから生徒会側だしー。赤木くんもそうだしー」  間延びした声の主は、稲森さんだ。流石希望役員──正規の生徒会役員とでも言うべきか──教室内の空気を一瞬にして変えて見せた。話題を振られたと感じた赤木くんが「そうだな」と頷くのも聞こえる。 「別にチクッたりしねーけど、指定役員に聞かれてもしらねーぞ、俺は」  ただ、その答えは舌打ち混じりだった。桐椰くんに散々酷いことされてたから、御三家が怖いのかな。 「とりあえず、今まで通りにしておくほうが無難だと私は思うなー」  稲森さんの鶴の声で、クラス内が静かになる。みんな出てくるかも、と慌てて教室の前から移動した。桐椰くんは、相変わらず意地の悪い笑みを浮かべながら、隣に並んだ私を見下ろした。 「お前、マジで友達いねーな」 「桐椰くんだって松隆くんと月影くんしかいないくせに!」 「いないヤツよりマシだ」 「……ばーかばーか!」  憎まれ口を叩いてから、溜息をつく。こんなはずじゃなかったのに。
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