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「……勝手に条件を提示した挙句、よりによってそれは勝手だろ。大体、そんな競い方に何の意味がある?」
「どちらがより生徒に支持されてるかを知るチャンスでしょ?」
「支持なんて関係ないし、大体あれはただの媚びだろ。あんなくだらない……」
「ねぇ、松隆くん、コンテストって何?」
はあ……と深い溜息が落ちた。苦虫を噛み潰した顔は、こちらを向きもせず。
「ベストカップルコンテスト、だよ」
……はい? 唖然としたのは私だけじゃなくて、桐椰くんも月影くんも同じだった。桐椰くんは冗談だろとでも言いたげだし、月影くんも、困ったように眼鏡を押し上げながら松隆くんを見た。
「……覚えがないんだが、去年もあったか?」
「遼は他校生と揉めてて、駿哉は興味ないからって文化祭に来なかっただろ……。花菱の文化祭には毎年恒例であるんだ、各部のベストカップルを競うコンテストが……」
そんな馬鹿馬鹿しいものが? と二人の顔には書いてあるし、松隆くんも想定外の勝負に額を押さえている。でも笛吹さんは「毎年盛り上がってる最高のイベントなの」なんて意気揚々としている。
「三日間、それぞれ文化祭委員が企画してるカップルイベントがあるから、それに参加してポイントを稼いでもらうの。そして三日目の夕方、ステージで観客が一番お似合いだと思うカップルに投票を行って、その得票数とポイントとを合計して競う。盛り上がるのが分かるでしょ?」
「ちなみに、去年の優勝は明貴人とアタシね」
それって生徒会が企画して生徒会が優勝してるだけなんじゃ……と思ったけれど、それが表情に出ていたのか、気付いた笛吹さんが肩を竦めて見せた。
「言っとくけど、ズルはないから。確かに文化祭統括者は企画役員の私だけど、基本な仕事は文化祭委員がやってる。生徒会役員と委員会は兼任不可だし。それに、三日目のカップル投票には外部客も来るんだから」
「なるほど……?」
「それに、去年のアタシと明貴人はまだ生徒会役員じゃなかったし」
「それは分かってるどね……」
二人の説明を聞いても、依然として松隆くんが納得する気配はない。
「……何か問題でもあるの?」
「去年が八百長じゃなかったから今年もそうじゃないなんて保障はないだろ。生徒会の権力は年々増す一方だ」
「そんなことしないに決まってるでしょ。文化祭委員が生徒会を贔屓したってなんの得もないんだから」
いやだから生徒会至上主義の学校では何を言われても説得力がないんですけど、と多分御三家も含めて思った。
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