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その後、ごく自然に第六西へ行き、松隆くんと桐椰くんがソファ、月影くんがパソコン前の椅子に座った。松隆くんは腕を組んで溜息をつく。
「消去法で決めよう」
「何を?」
「桜坂と組む相手を」
「えっ、消去法は酷くないですか? こんなに可愛い私とカップルごっこできるんだから――」
「とりあえず、俺は選択肢外だろうな」
「そうだね、駿哉はさすがに向いてなさすぎる」
「ってことは俺かお前か……面倒くせえな」
みんな私のことを無視だ。酷い。
「あとは蝶乃と鹿島を見張る役も考えないといけないから、それとの兼ね合いかな」
「……蝶乃の隣かコイツの隣か……?」
桐椰くんの顔がひきつった。究極の選択でも迫られているかのような顔だ。
「そんなに私とカップルごっこ嫌なの?」
「嫌に決まってんだろうが、お前鈍そうだし」
「失礼な! 確かに運動神経はあんまり良くないけど!」
「ただ、あの女の近くにいるのも……」
「桐椰くんと蝶乃さんって何かあったの?」
桐椰くんは蝶乃さんを毛嫌いしているし、蝶乃さんも桐椰くんにはやたらめったら突っかかる。それを思い出しながら何の気なしに尋ねたつもりが、第六西の空気が凍った。というか、桐椰くんが一人だけ硬直した。なんだろう、そんなにマズイこと聞いたかな? もしかして桐椰くんの地雷か弱味?
わくわくと目を輝かせながら身を乗り出すと。
「ああ、知らないのか。元カノなんだ」
……。……え?
「え!」
「おい言うなよ……」
思いがけぬ過去の事実に唖然とした、というか耳を疑った。元カノ? とてもじゃないけど相性が悪い気しかしない。そもそも二人の態度だってそんな風には見えなかったし、いやビジュアル的には美男美女でお似合いだけど……。
「なんで!?」
「別になんでもなにもないけどな……」
あまり答えたくなさそうな、ぼそぼそとした声だった。
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