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「そんなに意外か? 当時はデレデレしてて見れたものじゃなかったが」
「おいその情報要らねぇだろ! つかお前、デレデレなんて単語遣うキャラじゃねぇだろ!」
赤面した桐椰くんが立ち上がって、月影くんのネクタイごと胸座を掴んだ。でも月影くんは相変わらずの無表情で淡々と、私の方を見ながら暴露する。
「付き合ってたのは中学当時の話なんだが、傍目には遼のほうがベタ惚れとでもいうべき有様で、散々振り回されていて愉快だった。挙句、高校進学を機にという非常に汎用性の高い、すなわち都合のいい理由と共に捨てられ、蝶乃は鹿島に乗り換えたというわけだ」
「ほうほう」
「おい勝手にペラペラ喋るなよ!」
「っていっても、遼も卒業する頃には蝶乃の我儘っぷりに辟易してたからね、別れるべくして別れたってわけ。そもそも、蝶乃自身も次の男を捕まえるまでの繋ぎ、あるいは彼氏持ちっていうステータスのためだったんだろうけど。今はあの有様だし」
ステータス、なるほど。言っちゃ悪いけど、蝶乃さんなら考えそう。
「おい……」
「だから今はコイツも蝶乃も付き合ってたという事実はなかったことにしている。まあ、蝶乃はコイツをキープしておきたくて生徒会に度々誘ってはいるが」
なんだか桐椰くんがとても可哀想に思えてきた。憐憫を精一杯込めた目を向けるけれど、桐椰くんは暴露話をした二人に殺気を放っていた。
「いい加減にしろよお前ら……そんなに楽しそうに話しやがって」
「まあ、実際、俺と駿哉と透冶は笑い話にしてた。毎日のいい話のネタだった」
「最低だなお前らは! つか透冶もかよ!」
「アイツは一頻り笑った後に俺たちを諫めるのが一連の流れだったな」
「くそが!」
赤面しながら吐き捨てても迫力も何もない。
それにしても、この桐椰くんが、中学生のときとはいえあの蝶乃さんにべた惚れで振り回されてた……。その一面が意外過ぎて、じろじろと眺めてしまった。
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