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「……まだ未練あるの?」
「はぁ? だから冷めてたって言ってんだろ!」
「だったらさっさと別れれば良かったのに」
「……色々あったんだよ」
「そうだね、色々。付き合ってる内にコイツが浮気したとか、色々」
「おいコラ!」
今度はまた楽しそうに松隆くんが口を挟んだ。桐椰くんは赤面したままだけれどやや慌ててソファに戻る。慌ただしい。
「やめろよ! なんで俺の暴露話になってんだよ!」
「そう言えばそんな話もあったな。別に一目惚れじゃないなどと言い訳はしていたが、どう見ても蝶乃に対する態度も変わっていた上に、街中でも探す始末……」
「やめろ。もうやめろ。マジでやめろ」
頼むから、といつも偉そうな桐椰くんがソファの背に手をついて項垂れてる。桐椰くん……。
「なんだか、話聞いてると結構最低だね」
「その点は言い訳できねーけど……あの女も厳しいんだよ。男は女に奢れ、他の女と一切話すな、電話は五分以内に掛け直せ……」
「束縛強い系女子ですね。桐椰くんは束縛されたくないタイプなんですね」
「いや、ある程度ならあるほうがいいけどそこまでは……って何言わすんだ」
「だってほら、この流れだと私と桐椰くんがカップルごっこすることになりそうじゃん」
肩を竦めてみせると、桐椰くんは苦虫を噛み潰したような表情になる。そんなに私と一緒は嫌かな。
「そんなに嫌なら松隆くんにお願いするからさ、我慢して元カノと乗り換え先とがイチャイチャするのを指をくわえて見ておきなよ」
「お前、言葉の選び方最悪だな」
「そんなことはないよー」
「まぁ桜坂、そんなに虐めないでやってよ」
私を諌めた松隆くんが、少し申し訳なさそうに苦笑した。さすがに虐め過ぎたと思ったのだろう。
「で、遼、どうする? もし駿哉があのカップルの見張りしてくれるなら、俺と桜坂が組むってのもアリだけど」
「適材適所であるべきだろう、他に役目がないなら俺はそれでも構わないが」
「んー、一応、他の生徒会役員共が何をしてるか見てくれてると助かるかな」
「だったら俺はそうしよう。遼、お前が桜坂さんの彼氏役だ」
「……分かったよ」
心底イヤそうな表情で渋々頷かれた。失礼だな、私だって大して仲良くもない桐椰くんとカップルごっこなんて御免だ。下僕だから従うしかないけど。
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