二、御三家と下僕の契約事項、注意書き

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「じゃあ桜坂、眼鏡買いに行こうか。それからコンタクトも」 「え、コンタクトは何で?」 「その恰好でコンテストに出ても優勝できないだろうからね」 「……はい」  あまりに手厳しい歯に衣着せぬ物言いにしょんぼりしょげ返って項垂れる。桐椰くんは散々蝶乃さんとのことでいじられたからか、やや不機嫌そうに「じゃあ俺帰る」とアジトを出ていった。 「……ちょっと虐めすぎたかな」 「いいんじゃないか? 全て事実には変わりない」 「桜坂、別に遼が浮ついたヤツだって話じゃないから」  全て事実だとしたら浮気性な男なんだな、と顔で言ってしまっていたのか、松隆くんが苦笑したまま、またフォローを入れる。 「蝶乃から告白されたんだけど、アイツも彼女いたことないから戸惑って、でもって蝶乃は見た目だけは美人だし」  見た目だけ、を強調した松隆くん、やはり腹黒い。 「中学の頃はもっと大人しい性格だったから、なんて言うかな、守ってあげたい系? それにほいほい騙されて、ふるのも可哀想とか言って付き合ってる内にアイツが本気で可愛く思っちゃったってわけ」 「はぁ……」 「ただし、騙されて、だからね。アイツは”彼女ってこんなもん”って最初は言い聞かせてて、そのうち面倒臭がるようになって。そうこうしてる内に別の女の子好きになっちゃったってわけ」 「へぇー……じゃあなんだかよく分からない内に告白されて可愛く見えちゃったけど付き合う相手じゃなかった、みたいな?」 「大まかにいうとそうかな」 「中学の頃から遼の女子人気は高かったからな。蝶乃もステータスにはもってこいだったんだろう」  なるほど。桐椰くん、見事に蝶乃さんに騙された系男子なんだな。可哀想に。 「でも、蝶乃と別れてからは別に移り気なわけでもなし、浮気性なわけでもなし」 「ねぇ、その蝶乃さんと付き合ってる内に好きになった子はどうなったの?」  さっきから名前も出てこないんだけど、と尋ねると、松隆くんと月影くんが顔を見合わせた。
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