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「ていうかー、何で桐椰くんと桜坂さん、急に文化祭やる気になったのー?」
みんなの視線は一斉に稲森さんに向き、桐椰くんもじろりと睨み付けるように振り向く。稲森さんは素知らぬ顔でツインテールにした栗色の毛先を人差し指でくるくる弄ぶ。
「噂で聞いたんだけどー、桐椰くんと桜坂さんがカップルコンテスト出るってほんとー?」
桐椰くんの顔がひきつり、私の顔もひきつり――そして、教室が一斉に騒めいた。
「え、それ本当?」
「なんでなんで?」
「やっぱこの間の、桐椰くんと付き合ってるから桜坂さんだけ助けてもらったんだ……」
多分、稲森さんに悪意はない。素直に疑問を口にして、素直に噂を確認しただけだ。
……が、悪意はなくても結果は同じ。いつの間にか私達はいじめっ子ではなくカップルとして注目の的になってしまった。桐椰くんが硬直したせいで私も出方が分からずにだんまりを決め込んでいると。
「否定しないんだ……」
……最悪の一言が放たれた。
お陰で一層「マジで?」「いつから?」「どっちから?」「桜坂からじゃね?」「えー不釣合いでしょ」と色んな口に色んなことを言われ始めた。
どうしよう、やばい、どうしよう。手を止めたみんなの視線は突き刺さるし、舞浜さん達の目も「なんで教えてくれなかったの?」なんて私を責めてるし。ちなみに八橋さんは、今がチャンスとばかりに周りの子に守るように囲い込まれ、慰められていた。うーん、この状況が幸いだったのは八橋さんだけ。
で、この場を一体どう切り抜ければいいのだ。チラッと桐椰くんを見上げると、「どうにかしろよ」と目が脅迫してくる。私のせいじゃないもん!
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