二、御三家と下僕の契約事項、注意書き

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「もしかして違うのー? 違ったらごめんねー。ていうか、そもそも付き合ってないのー?」  カップルコンテストに出るってことは付き合ってるんだと思ったーなんて首を傾げられ、私と桐椰くんは「エッ」と内心呼吸を合わせた。もしかして出場資格はカップル? 蝶乃さんと笛吹さんが特別に許可してくれただけで、カップルじゃないと票は集まらない? ただの仲良い男女じゃだめなの? めくるめく疑問を遮るように、桐椰くんが舌打ちした。え、なにそれ私もしたいよ。そして――肩が掴まれたかと思うと──抱き寄せられた。 「そういうこと。手ぇ出すなよ」  ……は。 「ちょ、ちょっと待ってよ桐椰く――」 「俺とコイツ、付き合ってるから。二人でカップルコンテスト出るからよろしく」  よろしくって何が!? 顔でも口でも抗議したかったけれど、私に余計なことを言われないためか、肩が割れるんじゃないかと思うほど強い力で胸板に押し付けられた。抗議ができないどころか鼻が潰れる! もがく私の体を腕ごと捕まえながら、桐椰くんが教室を見回す気配がした。 「ついでに、カップルコンテスト、生徒会の蝶乃と鹿島も出るから。生徒会を潰すために、手始めにアイツらを負かす」  マジ……? なんて声が聞こえた。そりゃそうだよね、急にそんな宣言されたら唖然とするよね! 「えー、そうなんだー。じゃあ桐椰くんと桜坂さんが優勝したら、生徒会潰れちゃうのー?」 「優勝したからってすぐに潰れやしねぇよ。潰す足掛かりにするって言ってんだ」 「そっかー」  いやいやいや「そっかー」じゃないよ稲森さん! 稲森さん、希望役員なんだから! もっと反抗しようよ! 「でも御三家に潰されちゃうんだったら仕方ないよねー。潰れたらよくあるただの働く生徒会になるのかなー」 「だろうな」 「あたしは別にどうでもいいしー、ていうか松隆くんのファンだからー。桐椰くんと桜坂さんがイイ感じだったら票入れてあげるねー」  前言撤回、稲森さんナイス! これで一票ゲットとガッツポーズしたいけど、できない。桐椰くんの胸板をガンガンガンと拳で叩くと、やっと力が緩まった。ぷは、と顔を上げると、首から鎖骨にかけてのラインがあまりにも綺麗だったので思わず目を逸らした。たまに忘れるけど、桐椰くんってイケメンなんだよね……いい体してるし……。 「っていうかー、いつから付き合ってたのー? 教室の隅でイチャイチャしてるのは知ってたけどー」 「先週から」  多分、生徒会室に呼び出された日のことだな。その設定、覚えておこう。 「そうなんだー、なんて呼んでるの?」 「はっ?」  ふんふん、と一人で頷いていたけれど、さすがにその質問には桐椰くんと一緒になって固まってしまった。呼び方だと……? 頭上から困った気配が(ただよ)ってくる。見上げると焦っていた。……もしかして、桐椰くん、私の名前を覚えてないんじゃ。  じっと見つめ続けていると狼狽(ろうばい)した目が見下ろしてきた。なるほど、助け船ですか。 「亜季ちゃんって呼ばれてるイッ……!」
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