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黄昏は世界を連れて終わる
尾行は失敗だ。見失った。おまけに迷子になってしまった。どこだ、ここは。
あたしにはさっぱりわからない。普段乗る電車で学校の最寄りを過ぎた先にある駅だということが、わかる程度。
「……学校か病院に行くんだと思ってたのになあ」
初めて足を踏み入れた駅の改札を通り抜けて、あたしは小さく呟く。駅員さんの元気なアナウンスでかき消された。今年でこの辺りの路線が150周年らしい。自分も長い歴史の一部にいたんだなあとぼんやり思った。
先輩はどっちへ行ったんだろう。金髪で背が高い先輩は見つけやすいはずなのに。辺りを見回しても近くにはいないようだった。
右と左に出口がある。2つだけで良かったと思うべきか。間違えたら道もよくわからないあたしは駅に戻ってくるのも難しいかもしれない。とはいえ、ここで待っていては日が暮れて終わってしまう。何もせずに帰るのだけはごめんだ。
こういうときは、前の人についていこう。パッと目に入った人の後に続いたら北口だった。先輩もそうであることを願う。
しばらくついていこうと思ったものの、残念ながら商店街の途中でラーメン屋さんの中へ吸い込まれていった。
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