平民の魔法師様に拾われました。

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 そして、舞踏の音楽が奏でられ、夜会が始まった。  子爵位を賜ったリュート様に、たくさんの人が群がってくる。  それを阻むように立ち塞がったのは、魔法師団団長のロドニー=スペンサー侯爵様。まるで、私たちを守るかのようだ。 「おめでとう、リュート。ようやくお前も貴族の仲間入りだな。ここまでよく努力した。お前を抜擢した私も誇らしいよ」 「ありがとうございます、団長。団長が見出してくれたおかげです!」 「これからも頑張れよ。お前なら、もっと上を目指せる」 「頑張ります!」  スペンサー侯爵様の前では、まるで子どものような顔になるリュート様。  スペンサー家は我が国の筆頭侯爵家であり、若き侯爵のロドニー様は、魔法師団の団長でもある。  そんな彼がリュート様の能力を見出し、側近にして、リュート様の力は更に飛躍した。リュート様にとってスペンサー侯爵様は、まさに恩人といえるお方なのだ。  そんな彼と話をしている以上、誰もこの中に入ってこれない。皆は焦れる気持ちを押し隠し、私たちを見守っていた。その中に、アーロン子爵家とブライアン様もいる。リリーは、ひたすらリュート様を見つめていた。その視線に嫌なものを感じる。  もしかして、私からリュート様を奪おうとしている……?  婚約者がすぐ側にいるというのに、なんて迂闊な。  と同時に、リュート様の気持ちがリリーに傾いてしまったらと思うとたまらない。落ち着こうと自分の気持ちを懸命に宥めるけれど、なかなか収まらない。  その時だった。 「おめでとうございます、リュート様。いえ、もうワーナー子爵ですな。そろそろ私共ともお話してはもらえないだろうか」  強引に会話に入ってきたつわものは、エーメリー公爵様だ。我が国唯一の公爵家である。隣には、王太子妃候補にもあがっていた御令嬢を伴っている。この時点で、何を目的としているのかは一目瞭然だった。  令嬢は、美しいカーテシーを披露する。 「エーメリー公爵家の長女、ジュリアと申します。本日は誠におめとうございます、リュート=ワーナー様」  あまりの美しさに溜息が零れる。しかし、すぐに我に返った。何故なら、リュート様に腰を抱かれたからだ。 「ありがとうございます、エーメリー公爵令嬢」  ジュリア様は僅かに眉をあげ、扇を広げて口元を隠す。 「そちらの女性は、どういった方ですの?」  ジュリア様の目を見て、ヒッと声をあげそうになった。射殺されそうなほど鋭い視線。  彼女だけではない。他からもそんな視線をひしひしと感じる。もちろん、リリーも私をじっと睨んでいた。  怖くて挫けそうになるけれど、ここで俯いてはいけない。だって今の私は、リュート様の婚約者役なのだから。  私は胸の内を悟られないよう、必死に平静を保つ。そんな私を、リュート様は更に引き寄せた。  リュート様は蕩けそうな表情で私を見つめた後、ジュリア様だけでなく、この場の皆に向かって言った。
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