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大陸の片隅に、リーテン王国という小国がある。
小さいながらも、自然豊かで資源に恵まれ、輸出産業と観光業で潤っていた。
この国の貴族は魔力を保持し、高位ほどその量は多い。しかし、その魔力を使える者はほとんどいなかった。
魔力を使える者は「魔法師」と言われ、王族に次ぐ地位を与えられていた。彼らは保持している魔力を使い、攻撃や防御、回復をしたり、日常生活に必要な魔道具を作ることができるためだ。
彼らがいなければ、国は立ち行かない。他国への流出はなんとしてでも避けなければならない。それ故、国から大切に保護されていた。
魔力は多ければ多いほど良いとされている。例えそれが使えなくとも。
魔力の多い者同士が結ばれることで、子もまた多くの魔力量を持って生まれてくる。その中から、魔力を使える者が出てくるかもしれないからだ。
未来の魔法師を生み出すため、貴族たちはより多くの魔力を持つ者と縁を持とうとする。
それは、可能性の低い下位貴族も同じ。いや、彼らの方がより熱心かもしれなかった。
下位貴族が成り上がる、希少なチャンスなのだから──。
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