人生の寄り道

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 そう言って、私もグラスを空ける。次は、グレンリベットのソーダ割りにしようと思った。私が一番慣れ親しんだスコッチ。 「欲しいじゃん、ときめきとか、肌の触れ合う幸福感とか」 「くっつくのってそれだけでいいよなー。正直、性欲そんなあるわけじゃないからソフレいればいい気がしてる」 「でもそれだと、服脱いで寝なきゃだから、どっちにしろ流れでセフレになるんじゃない?」 「たしかに」  私たちは顔を見合わせて笑った。  私たちの似ているところは、肌を重ねるのが好きなところだったのかもしれない。ただ、肌をくっつけて唇を重ねて。それだけで幸福がやってくる。中に入れるだとかそういうことは二の次で、本当にただ抱きしめ合えればよかった。そういう恋をしていたのかもしれない。もう思い出せないけれど。  結局二人でたっぷりお酒を飲んだ。飲みは深夜の二時まで続いた。いくら話しても会話は尽きなかったけれど、明日の予定もあるし、何より私たちにはこれからしたいことが決まっていた。  近くのホテルを調べておいてくれた俊也はすぐにホテルまで案内してくれた。ラブホテルに入ったのは片手で足りるほどしかなかった。俊也とということで緊張はしなかったけれど、単純に部屋には興味があった。今まで入ったどこのホテルの部屋も雰囲気が違って面白かったのを思い出す。ラブホテルというのは普通のホテルと違って趣向が凝っていて面白いものだ。 「こんなもんかー、なんか面白いもんないかな。とりあえずお腹空いちゃったー」  そんなことを言いながら、俊也がそこに置いてあった案内表を広げ出す。ページをいくつも捲っていくが、どうやらお目当てのものは見当たらないようだった。 「なんだよー、ここ。食べ物のページないじゃん」  駄々をこねるような子供のようにその冊子をテーブルに投げ出した。そういえば、飲んでばかりでまともに食事をとっていなかったことに私はそこで気が付いた。私はお腹が空いたと感じなければ食べないし、めんどくさいと思ったらお腹が空いても食べない。そうやって、体型を維持していた。 「俊也太ったから、神様が痩せろって言ってるんじゃない」  私が冗談めかしてクスクス笑う。 「そうなんだよなー、かなり太ったんだよなー」 「痩せてる方がかっこいいよ、俊也は」 「痩せたいとは思ってるんだけど、食欲には敵わないんだよなぁ」  お腹を触りながら言っているけれど、私としては明らかに丸くなった顔を見て言ったのだった。せっかくかっこいいのに、勿体ない。性格とともに体型まで丸くなった俊也は、それはそれで可愛い気もしたけれど。
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