プロローグ

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今から数千年後の話―――― 直径数千メートル規模の隕石が、地球に衝突した。 これは宇宙開発や研究に携わる人間が予測しえない突然の事象であった。 人間は自らが世話になっている天体の、たった一つの天気現象さえ、満足に予測し得ないのだ。 惑星外からの脅威に人類が成す術などあろうはずがない。 各国政府はこの事態を受け、一致団結し、一時的に諍いや闘争を中断し、隕石衝突をあらゆる手段で回避しようとしたのだが、今仲間になったばかりの者と連携がうまく取れるはずもなく、悉く人類の策は失敗し、ついに衝突回避は免れなかった。 人類史上、未曽有の危機の到来である。 詳細は割愛するが、これにより、地球という天体からほぼすべての生命体、築き上げてきた超高度文明、神羅万象ありとあらゆる物が滅び、なくなった。 後の地球から見上げる空には――――隕石衝突により新しくできた、月以外のもう一つの衛星が浮かんでいた。 それでも地球は辛うじて太陽系周期から外れることなく、天体はまだ無事である。 地球上の生命体はほぼ全滅ながらも一種のみ、わずかに生き残っていた――この天体で最も賢い生き物、人間である。 奇跡的に隕石衝突/後災害(地殻津波など)から無事だった数少ない核シェルター、というべきか、とある国の政府が密かに作り上げていた大規模な地下施設の中で……生き残ったわずか数百名程度の人類はしぶとく生き残り、地上に出られる日を、チャンスを窺っていた。……外(地上)は天災の影響により、未だに煮えたぎったマグマが跋扈し、海水がすべて蒸発、まさに生き地獄である……地球上の地上、どこもかしこも似たような状況だった。 この緊急事態のさなか、群れのボス格/リーダー格のひときわ賢い者は言った。 「残った者たちだけでもう一度繫栄し、人類再興を目指そう!地上が元通りになるまで、みんなで助け合って生きて行こう!みんなで力を合わせていけば、きっとこの先、なんとかなるよ!いや、みんなでそうするんだ!」 大多数の愚者はこの者の意見(人類再興→地上にでるまでここで生きていく方法を考えつつ人類を増やしていく)に賛同した。 群れない賢い者たちは思っていた。 「地上が人類生存に適する状態に回復するまで、いったい何年かかる?それはいつだ?……ここに蓄えられたあらゆる資源は超大規模とはいえ有限。資源が増える可能性は限りなく低く、酸素も水も食料も今後必ず先細りしていく。……繁栄だと?この状況下でそんなもの、望むべくもない……現状維持ができなくなる前に、今後どうすべきかよく考えるべきだ」 意見は多少違えど、同じような考えの者たちは、互いに協力はせずとも、同志のような絆で結ばれていた。(とにかく現状維持できるかどうか→状況悪化の前に何かしらの打開策を打つ→今後の成り行きを見守り、臨機応変に対応していく) 愚者の中の、賢者に賛同しない超少数派の混沌に生きる者たち(この極限状況下でこいつらを”悪者”と言っていいかわからない)は思っていた。 「誰かの手伝い、誰かと助け合いなんか嫌だね。誰かに服従するなんて、もっと嫌だし絶対ゴメンだ。オレはいつだって自由だ。腹が減れば食うし、奪いたきゃ奪うし、目障りなら殺す。あいつらリーダー格の奴らを駆逐してやる方法は無いかな……」 このようなテロリスト/サイコパス気質の彼らは、生存できた者たちの中に数名だけいた。彼らはそのような思想であっても自らの野心あるいは欲望のために同様の者たちと群れ、愚者の中でも従順且つ弱きものを従えてリーダー転覆を画策していた。
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