プロローグ

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たった数百名にもかかわらず、その中では人類史のきたならしい縮図、これぞまさに人類そのもの、という集大成が完了していた。 結果、地下施設内で、即座に争いは起きた……統率、一致団結など望むべくもなく……争い、傷つき、死に、飢え、犯され、奪われ、……その悲惨さ、光景に自害する者もいた。 一握りの臆病で幸運な愚者と一握りの賢者のみが生き残り、ささやかな繁栄を謳歌した。日の目を見ることも称賛もされないその人類の末裔たちは、確かに生きながらえていた。 ―――― それから数年経ったある日、生き残りの人類から生まれてくる子供に変化があった―― 人間の形ではあるのだが…… 皮膚の色が、全然違う……白、黒、黄色、ではないのだ。 どす黒い赤、青、緑、紫などだ。 彼らはまず、成長速度が半端ではなく早い。人間と筋量が違うせいか、分娩から数日でいきなり自立歩行及び二足歩行できる、頭脳の出来も人間の比ではなく遥かに賢かった。 人間の標準的サイズ――1.7メートル前後の身長におさまらない体のサイズは、まさに人外の化け物――彼らの最終的な成人サイズは、平均3メートルから最大の者で4メートル程度にまで成長した。……そんなサイズだというのに燃費は人類より遥かに良く、数週間のまず食わずでも生き延びられるのだ。 成長するにつれ、鋭い牙、爪、そして角を蓄えるようになる。 とにかく彼らは、純粋な人間よりすべてにおいて遥かに強く、劣っている点は皆無だった。 生き残った生物学者、科学者、医師たちの賢者は、純粋なホモサピエンスではない彼らを調べ上げることに奔走した―― が、何一つまともな文明の利器が残っていない現状では調べることが困難を極めており、本当に確かなことはわからないが、恐らくは、現在の地上の状態を把握するための体に、隕石に付着していた地球外の未知のウィルスか何かが体内に侵入し、人間に定着した後、遺伝子に寄生し――それが子供に影響が出ている原因ではないか、と結論付けた。 当然、外に出ていない臆病者たちから生まれる子供は、普通の人間のままだった。 それから数年、数十年が経ち――ついに大量にあった資源が尽きる時がやってくる。――水や食料の枯渇も深刻だが、それより機械(空調)の循環系が寿命を迎えており、もし完全に壊れれば、ここに酸素を供給することができなくなる―― 事態が起こった直後、争うことによって生き残った人間の数を10分の一程度まで減らしていなければ、これほど持ちはしなかっただろう。 地上に出て新たな資源を得なければ、いずれ全滅してしまうであろう予測がつく日―――地上は回復に向かってはいようが――いまだ地上に出るのは危険であると判断できる現状――しかし、もう外に出て何かを得るしか生存の方法がなく、人類は決断に迫られていた。
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