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しかし彼ら人外の者たちは臆さずに地上へ出て、未知の生物だらけになった地上から何かを取ってきては、彼ら人類の末裔たちに食料を分け与え続けた――自らの親のみならず、すべての純粋な人間に対して――
彼ら人外の者どもが、人間から「鬼」と呼ばれ純粋な人間たちから忌み嫌われ、対立する前の――遥か遠い昔の話である。
後に地下施設から恐る恐る地上に出た純粋な人間たちを待っていた世界は……人間がギリギリ生きていける酸素濃度、ギリギリ生きていける気温、以前の生態系は完全に失われており、見たこともない大小様々な獣、物語に出てくるような妖怪変化の如きおぞましい化け物……魑魅魍魎が跋扈する、同じ地球であるのだが、そこはさながら「異世界」と呼ぶべきものに様変わりしていた。
この事象(異世界発生)も、地球に衝突した巨大隕石がもたらした変化なのか――もはやこの問いに答えられる者はおらず――そんな事以前に、か弱い人間が一から道具無し、戦う兵器無しで容易く生き残っていけるような世界ではなくなっていた。
――人間のハイブリッド亜種とでも呼ぶべき、「鬼」以外は――
ただ、そのことよりももっと重要な、考えるべき事があることを、地下から這い出たばかりの人間も鬼も、危惧するには至らないでいた。「月が二つ存在する」とはどういうことなのかを――
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