正しい告白の仕方

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 夏休みは後半に差し掛かり、バイトだけの生活から補習が戻ることになる。  学校行きたくないな……。幸い仁木くんは補講とってないし、黒須くんもいない。せりと和香もいない。相談でも出来たらいいんだけど、まだ誰かに話せる心境でも無くて……話してしまえば余計に真実味が帯びるというか……。もう紛れもない真実、なんだけどさ。  逆にバイトは残りあと少しかぁ。週末だけでも続けようかな、どうせ予定も無いし。高校生活って案外時間を持て余すものなんだ……。  ――夏休みだけのつもりだったバイトを続けるかどうか悩みながらのバイトの帰り道、まだ外は暑い夕方だった。   「紅葉ちゃーん」  潤の声が追いかけて来た。振り返ると、屈託のない笑顔に吹き出した。 「元気だなぁ」 「一緒に帰ろう」 「うん」 「普通、同じ時間に終わったら一緒に帰るもんじゃないの? 」  むくれた潤にまた吹き出して、「ごめんね」と謝った。それから、仁木くんとのやりとりを思い出してひどく心が沈んだ。あの人もこんな風に少しの時間でも人と話して楽しむ人だったな。 「夏休み、どっか行った? 」 「ぜーんぜん。バイトだけー」 「紅葉ちゃん、バイトもそんな入ってなくね? 」 「まあ、そうなんだけどね」 「部活、してたっけ」 「してない」  ……じゃあ毎日何してんのとばかりの視線に苦笑いした。 「ま、休みってあっという間に過ぎるもんな」 「うん。ダラダラしてたらあっという間」 「バイトは? 続けんの? 」 「それ、今どうしよっかなって考えてたとこ」 「そっか。俺、続けようかなって思ってる」 「……ええ、そうなの? 出会いないのに? 」  思わず口に出してしまったけど、ここで収穫なくとも彼女は出来たかもしれないよね……。
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