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「知らない男に勝手にジャッジされてんのは怖いかもしれないな。ごめん」
「あ、んーん、大丈夫」
「そっか。なら、別に普通にちゃんと言ってたから、自信持ちなよっていうのもおかしいけど、素直に受け取るのもいいかも」
「……じゃあ、あり、がと」
「はは、うん。紅葉ちゃん、彼氏いないんだよな。麻里ちゃんが言ってた」
「あー、うん。うん」
麻里ちゃんに話したことは誰かに話されてもいいことだから、驚きはしないけど、恋愛系の話は今の私の心境的にあんまり話して欲しくなかったなと思うと曖昧な返事になってしまった。
「じゃあ、また時々誘う。えーっと、彼氏いたら誘えないじゃんってくらいのニュアンス」
「あ、うん。おーっけー」
「はは」
変なオッケーの言い方で笑われてしまった。なんだろうか、今はこのくらいがいいかもしれない。思えば私は男友達なんかもいなくて、男子に免疫ないまま誤解だったとはいえ、バツゲームに巻き込まれ、初めての彼氏と思っていた人は超イケメンで、少女漫画からそのまま飛び出してような人。そりゃトラウマにもなるよね。
少しづつリハビリするのもいいのかも。誰かの好意を『素直に受け取る』ってこと。次はちゃんと、対等で負い目を感じずに隣にいられる人とつき合えたらいいな。今はまだ、一人でいたいけど。
「バイト、続けようかな」
「あー、せっかく慣れたもんな」
「うん」
今の私には何にもない生活はちょっとキツイかもしれない。潤とゆるく話しながら帰るといくらか気が紛れた。「じゃあね」と簡単な挨拶で別れる。潤は話しやすいし緊張しない。楽でいいなぁと思う。だから友達止まりでダメなんだって麻里ちゃんは言ってたっけ。このくらいの関係性が今の心情に都合が良かった。
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