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――小野原くんのお陰で補習の最初の方記憶を飛ばした。
帰り道、小野原くんに気づいた女子が二度見して行った。他の女子からモテてしまうことでせりの心配をしたけど、直ぐに思い直した。心配しなくてもせりだったわ。せりになびかない男子がその他の女子になびくわけないのだから。
靴箱で小野原くんと一緒になったけど、彼は軽く口角を上げた程度の笑顔で通り過ぎて行った。
そうだよね、普通一緒に帰らないよね。妙に肩に力が入ってしまって、はぁと脱力した。やっぱ、仁木くんとか潤は人懐っこいだけだ。小野原くんは……無駄な労力を使わなさそう。せりとどうなったのか聞いてないけど、『せり元気してんの』って聞くってことは小野原くんも夏休みせりと会ってないんだよね。
――せり、夏休みは小野原くんに会いに行ってないってことだ。
付き合ってたら会うだろうと思う。……ダメだったのかな。大丈夫かな。いや、でもせりが振られるってことある?でもあの小野原くんだしな。頭の中、ぐるぐる二人の事を考えた。連絡してみる?でもわざわざ探るみたいに思われないかな。何かあったらせりから話してくれるかな。
結局私は新学期が始まるのを待つことにした。
自分の精神状態がままならない今、うまく慰めることが出来るか自信が無かった。和香と二人で聞こうと思う。そして、私も二人には話さなきゃと思う。
同じ教室にせりの好きな人も、私の好きな人もいるのはいい方に進めばハッピーだけど、そうじゃない場合は気まずいだけだ。はぁ、ともう一度ため息を吐くと炎天下へと飛び込んだ。クーラーで冷えた腕がじりりと焼かれる。慌てて日傘をさした。まだまだ暑い。
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