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こちらに背を向けているのをいいことに、仁木くんを見ていると、『優しい』で有名な黒須くんと目が合って微笑まれてしまった。それは、からかうような嘲笑を含んだものではなく、なんて悪意のない……その爽やかさに思わず顔があつくなってしまった。噂通り、良い人そう。仁木くんとはまた違うイケメンだし。
「何で、私。っていうのが大きいのと、もし、本当に仁木くんが私の事を好きで告白してくれたんだとしたら、私はすごく失礼なことをしたのでは……。だって、ただのいたずらだと思ったから、引っかかったふりしてさっさと終わらせてもらおうとOKしただけなの」
「……いや、でもさ、紅葉。仁木だよ? いたずらだって思わなかったとしてもOKするでしょ。断らないでしょ。私、仁木のこと何とも思ってないけど告白されたらOKするよ。みんなそうだと思うよ? 勘違いだろうとなかろうと、結果は一緒でしょ」
「した、のかな。考えたことなかった……」
「え、まさか、断るの? 」
「でも、やっぱり何で私? とは思うだろうね。何で、窪寺さんじゃないのーって」
「ああ、窪寺せりね。確かに。窪寺さんなら、好意を疑ったりしないだろうね。それこそ、話したことない子からバンバン告白されてるだろうし。もうすでに他クラスどころか、他学年とか、他校からも告白されてるらしいよ。仁木とも仲良かった気がする」
「うん。仁木くん美醜の判断はちゃんとついてて窪寺さんのこと可愛いって言ってた。あと、面白いとも」
「え、自分の彼女にわざわざ他の子可愛いって言うの、あいつ」
「違う違う。美醜の判断ついてるか確かめるのに私が聞いたの」
「……よくわかんないけど、そうなんだ。面白いねぇ。あ、仁木にとって窪寺せりは『おもしれぇ女枠』ってやつじゃない? 」
「それって、他の女とは違うって好きになる奴じゃん」
「あ、そっか。じゃあ、紅葉がそうなのかもね」
「はは、どうかな」
どうかな。そう思っていると、ちょうど窪寺せりが仁木くんの横を通りすがるひと時で、彼と親し気に話していた。……すごく、絵になる二人、だった。
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