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早速、今日はお昼休みにでも和香とせりに報告しなくっちゃ。
そう思いながら教室に入る。目に飛び込んできた光景に肩がビクリと上がった。
「えっ」
思わず出てしまった声に口を押え慌てて自分の席に着いた。仁木くんも二度見をしてるし。教室に入って来た人は必ず二度見して、誰かとそのことについてひそひそ話している。私のところにも和香がやってきて、
「ねえ、あれどう思う? 」
はばかることなく二人を指さした。
せりが、小野原くんと1つの椅子をシェアしていたのだ。小野原くんは楽しそうに話すせりに、あーはいはい。とばかりあしらっているように見えるし、せりは物理的にも心理的にも小野原くんしか目に入っていないようだった。
「……うまくいった、のかな? 」
私がそう言って和香と顔を見合わせると私も和香も「ふ ふ ふ」と笑いが漏れてしまった。
「やば。やばいよね、せり」
「あはは、いいんじゃない? お昼にさ、私もせりと和香に話そうと思ってたんだけど、あの調子だとお昼も一緒に食べるかわかんないし、先に和香に報告しちゃお。色々ありがとう。おかげで、うまく行きました! 」
「やっぱりね! やっぱり! 紅葉のところはそうだろうなって思ってた。何なのもー。二人して落ち込んでると思ったら今度は幸せそうな顔してぇ。良かったねええ」
和香が私にぎゅううと抱きついてくる。
「ありがとう和香。私もせり見習って、周りなんて気にせずに行こうと思う」
ちらり、せりの方を見ながら言う。
「うーん。あんな可愛い子が至近距離にいて動揺も浮かれもしない小野原ってすごいよね」
「ほんとだ」
「でもないか。迷惑そうで嬉しそうだもんね。小野原」
本当だ。迷惑そうで、嬉しそう。そんな顔だった。満面の笑みを小野原くんに向けているせりを見ながら私も良かったねって、思った。
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