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目の前で見たことを秘密にしよう
僕は青木春。
女の子のような名前だと言われるが、立派な男だ。
身長が低く高校生にもなってまだ150センチ。
容姿が幼く見え、趣味が料理や家事の手伝い。
『これは優良物件!』とか、『一家に一台、いや、一人欲しい…
…』、さらには『私のお嫁さんにならない?』と婚期を逃した担任の女教師から言い寄られる始末。
しかし、大事なことだから二度言わせてもらう! 僕は男だ!
女の子扱いされることが嫌な僕は自己嫌悪になり、もっと男らしいことをしようと改善を試みた。
ある時は、運動をして筋肉マッチョメンになればと、筋トレを始めてみたり。ある時は、スマホで男らしさを研究しいろいろ試してみたり。
またある時は、勉学に励んで知的な男らしさを目指してみたりもした。
しかし、一つを除くが、うまくいったにも関わらず何も変わらなかった。
筋トレで筋肉をつけても『この前、公園で見たんだけど、『はぁはぁ』って言いながら走っててマジ可愛かった~』と、「かっこいい」とは決して言われない。
自分で男らしさについて調べて実行しても『その髪型は校則違反だ』、『香水なんか駄目に決まってるだろ』と、教師に色々注意を受けた。
勉強はできるようになっても、『よくできました』と幼い子供に向けるような口調で言われ、それはそれで心が傷つくだけだった。
そんな傷心中のことだった。
一人だけ、僕のことを男として見てくれる奴がいた。
身長は僕とかなり差がある180センチの高身長の女子。
特徴的なのは青白い不健康な印象を受ける肌。
さらには、幽霊を彷彿とさせる肩よりも長いみだれ髪。
前髪はもちろん隠れていて素顔が見えず、顔を一目見ようとし他の人が横目で通りすがりに凝視してみたらしいが、血走った目がギロッと向けてきたとかで怖くてそのまま何もせず通り過ぎたとか。
それからというもの、誰も彼女に近づこうとしない。
聞くのは、嫌がるようなあだ名や妙な噂ばかりだ。
最初は僕もあだ名や噂には嫌悪を覚えながらも、面倒なことになりそうだったから見かけても関わらないようにしていた。
しかし、あの日、あの場所で出会い見てしまったのだ。
バレンタイン間近の日、男子トイレを見張っている例の女が……。
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