4章 傷物令嬢、再び呪いをかける

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ミカエルの可愛い弱音にアンの下腹がゾクゾク縮んでキュンと鳴いた。こんなに自信満々な男のくせに、アンのだいっきらいは痛かったらしい。 「ごめんねミカエル。だいっきらいなんて嘘」 ミカエルに全身をキスされて、アンは疼く下腹の熱さでおかしくなりながらミカエルにキスを返す。そうするとミカエルが倍の熱量で応えてくれる。 混ざり合う熱が嬉しくて、ミカエルがくれるキスのどれもに詰め込み切れない愛を感じる。そんな愛に包まれたアンはミカエルの首にぎゅうと精一杯の力をこめて抱きついた。 また目に涙を溜めて、もう我慢しなくていい想いをやっと言葉に乗せる。ミカエルの耳の奥に直接届くように彼の耳の中でささやかに囁いた。 「ミカエル、大好き」   ミカエルの体がアンの愛語にピクリと跳ねたのが嬉しくて、アンは何度もミカエルの耳に愛を囁いた。 「大好き、すき、だいすき」 「俺も……愛してる。愛してる以上の言葉を知らないことが、もどかしいくらいに」 ミカエルの耳が熱くなり、アンを抱き寄せる腕が熱くなり、抱き締める力がぎゅっと強くなるのがどこまでも愛しかった。大好きと大好きをやっと素直に混ぜ合って、優しく丁寧に。でも意外にちょっとぎこちなく、ミカエルはアンを抱いた。   翌朝、星が消えてただの天井に戻った医務室でアンが目覚める。ごろんと寝返りを打つと、まだ肌色いっぱいのミカエルが隣に寝転んで全てに祝福された笑みを讃えていた。 「おはよう、アン」 「う、うん……おはよう」 アンの頭に昨日の情事がざっとハイライトで流れて、猫目をきょろきょろしてはにかんだ挨拶を告げるとミカエルがまた笑った。 「ご機嫌だね」 「今日より良い朝を俺は知らないからな」 素直に有頂天になるミカエルが服を着て、アンも再び碧眼色のドレスに身を包むとミカエルがドレスの背中を整えてくれる。 アンのむき出しの背中にミカエルが何度もキスをして支度がままならないまま時間が甘く緩く過ぎた。裸で身を寄せあうよりも服に身を包む方がなんだか寒い気がするのは、おかしな感覚だ。
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