4章 傷物令嬢、再び呪いをかける

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ご機嫌に眉尻を下げて可愛く笑うミカエルが、アンの首筋に頬をすり寄せて甘えてくる。 ヘレナがジェイドとハッピーエンドしただろう今、アンもこれ以上ミカエルを疑う必要はなかった。ミカエルが横恋慕ルートに走ったと思ったのはアンの勘違いだったのだ。 「……疑って、ごめんねミカエル」 アンの白い首筋に頬ずりして甘えていたミカエルは顔を上げて、誰にも見せない柔い笑みをアンにだけ見せてくれる。 「女が不安になるのは、男のせいだろ?謝らなくていい。アンを惑わせた俺が悪かった」 アンは猫目をぱちくりして、睫毛で風を起こしてしまった。俺様は偉そうだけど、俺様の懐は広かった。浮気疑いに小言も言わなければ、自身を省みるとまで言った。 ミカエルの度量に呆気に取られたアンは、わざわざ贈って着せたドレスを嬉々として脱がすミカエルの手を止めるのが遅れていった。 「このドレス、信じられないくらい似合ってるな。俺の色を着てくれた意味……アンが俺を好きだって伝わった」 アンが勇気をもって着た碧眼色のドレスの意味を受け取ってもらえて、アンの涙腺がますます刺激された。 もうミカエルに好きと伝えることができないと思っていたのに、全部受け取ってもらえた。ミカエルに贈られたドレスがズラされ、ホックを外され、露出する白い肌のあちこちに柔らかくキスされる。 「アン可愛い」 「俺のアン、抱けて嬉しい」 「好き、大好き」 ミカエルが積み重ねる愛語に、愛のキスに、アンは身を包まれどろどろと溶けていく感覚に満たされる。世界にたった一つの宝物かのように愛で触れられて嬉しくて止める理由もなくて、もう呪い魔法が解かれてしまってもいいと、身を委ねてしまう。 「ッん」 「アン、俺に抱かれるの嫌?」 星空の下のベッドの上で、二人ともの肌色面積がずいぶんと増えてから、お互いの荒い息の合間にミカエルの欲に満ちた碧眼が問うた。アンはむっと頬を膨らませた。 「今さらそんなこと聞くの狡い」 「ハハッ、ごめん」 全くごめんと思わないごめんを聞いて、アンは恥ずかしさを誤魔化すためにミカエルの首を両腕でかき抱いた。ミカエルはしっかりアンを抱き締め返して、柔い肌から伝わる体温に溺れて甘く本音が漏れる。 「強引にして本気で嫌われたら……嫌だなって思って。だいっきらいって言われたばかりだからな」
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