4章 傷物令嬢、再び呪いをかける

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朝の爽やかな光が差し込む明るい医務室の白いベッドとベッドの間に、一夜明けても豪華な正装のまま二人で向かい合う。 朝の医務室にドレスの煌びやかさがもたらす違和感が艶っぽい、新しい朝だ。 やっと身支度を済ませたミカエルが、アンの前にきちんと立ってまたご機嫌ににこりと笑う。ミカエルが可愛く笑うとアンの鈍い痛みを孕む下腹がまたキュっと縮む。 俺様が装備する可愛いは強敵だ。ついつい照れて熟れるアンのでこぼこの右頬を、ミカエルが優しく擦った。 「アン、どうする?」 「何が?」 「呪い魔法は解けただろ?火傷は俺がいつでも治せる」 「呪い魔法の解き方を知ってたの?!」 ミカエルがニタリと、いつもの俺様悪戯顔にぱりっと切り替わる。 「両想いの人に抱かれたら、右頬の時を止めてた呪い魔法は解ける、だろ?」 昨夜、ミカエルから魔王との抗争がどういう結末を迎えたのかを端的に聞いていた。簡単にまとめるとミカエルが魔王を瓶詰にしたという。 アンが知る乙女ゲー本編とはまるっきりかけ離れた魔王戦が繰り広げられたらしい。そうやって瓶詰魔王からミカエルは呪いの解き方を聞いたそうだ。なので、パーティどころか、ベッドが即必要だったのだ。ミカエルがアンを見つめてニタニタ笑う。 「俺に抱かれたいなら、もっと早く言えばいいのに」 「違う!ミカエルのこと好きになるわけなんてなかったから、絶対ミカエルにはできない解除方法にしてやろうと思ったの!」 アンが顔を熟れに熟れさせて頭の先から湯気を出して、ミカエルに向かってぷんすこほっぺたを膨らませる。 「俺のこと大好きなくせに、好きじゃないとか言ってツンツンしてるところがアンは可愛いからな」 「もう!最初は本当に好きじゃなかった!」 「本当に?」 「本当に!」 「ハハッ!それは知らなかった」 高らかに笑い倒すミカエルは、最初からアンに好かれているとずっと思い続けていたらしい。あの自ら焼きごて現場で婚約拒否されていて、どうしてそういう思考になれるのかアンにはわからなかった。 「それはそれで俺様の盲目がすごい……」 「俺ってすごい、だな」 「略し過ぎ」
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