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ミカエルの世界は、ミカエルの都合の良いように見えていて、それが本当になってしまうまで意地でも意見を変えない。
なので彼はいつも思い通りになると確信している。
自分の意見を通すために、何年かかってでも周りを変える。ある意味最強の努力家だ。そして、しっかり捻じ曲げられて惚れさせられたのがアンというわけだ。
「ブレない男、ミカエル……」
「アンの火傷、俺はこのままでもいいけど。国王が目くじら立てるからな」
アンの右頬を愛しそうに撫でるミカエルは、本気でこの顔のままでも愛してくれるのだろう。アンもそれはそれで、嬉しかった。顔ではなくアンの本質を愛してくれているようで嬉しい。
だが、アンも覚悟を決める時だ。
もう逃げる時は終わった。
この一途な男ミカエルは、きっとアンを監禁することはあっても断罪することはない。そう、信じさせてくれるだけの実績と愛がミカエルにはある。
何より、アンはミカエルに心底惚れ落ちてしまっているから。アンはミカエルを信じたかった。もう火傷なんて逃げ場はなくていい。
「この傷を、治してくれる?」
「もちろん、アンが望むなら」
ミカエルが撫でる手に、自ら右頬をすり寄せて、アンは猫目の上目遣いでミカエルを見つめた。
「顔が綺麗になったら……誰にも文句言われずにミカエルと婚約できる?」
「俺の色ドレスのアンにおねだりされたら、またベッドに戻りたくなる」
ミカエルが冗談とも本気ともとれる艶やかな声で語り、緩んだ笑みを魅せた。アンの右頬にミカエルが手をかざすと治癒魔法の光が集中し始める。
「だけどアン、残念だけどもう婚約なんてしてやらない」
「え?」
「俺はもうそんなものじゃ、満足できないから」
アンの右頬に優しい癒しの光が浴びせかけられて、アンは思わず目を瞑った。でももう、ミカエルの言葉を疑うことはなかった。
ミカエルの言葉は疑いではなく、期待で受け取るべきなのだ。そうすれば、俺様はいつだって、アンの期待を飛び越えていってくれる。
温かい光が消えて、アンが目を開けて右頬を擦る。そこには艶やかなつるつるの肌が戻っていた。ミカエルを見上げると、満足そうに深く頷いて。彼は笑った。
「アン、綺麗だ」
「ありがとう、ミカエル」
ミカエルが綺麗になった右頬にキスを贈ると、二人は喜びに抱き合った。
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