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「HOTEL・フェアリー」というラブホテルで私が働き始めてもうすぐ4年になろうとしている。こんなに仕事を、というよりは家の外に出てひとつところでこんなに長い月日を過ごせたことが、私にとっての驚きでもあり安どでもある。
私、楠加奈は、いわゆる引きこもりだった。
高校も卒業できなかったし、友だちなんて全然いないし、そもそもなんでこうなったのかもよくわからない。自分自身がわからないのだから、親にも理由の説明なんてできるわけがないし。とにかく外に出るのは自分にとって本当に必要な事をする時だけ。例えば、読みたいと思える本を買いに行く。ネットでいくらでも買い物はできるけど、本は、棚に並ぶたくさんの本の中から心が動いたものを選びたい。だからこの時だけは外に出る。
あとは、見たいと思った景色を見るため。沈む夕日、広く続くどんよりとした曇り空、誰もいない日の暮れた公園。自分のためになること、それだけ・・・
でもある時、超常現象の特集をやっているテレビ番組を見た夜、私は夢なのか現実なのかわからない、でもたぶん夢、を見た。
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