心残りの訳

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・・楠さんの後ろのヒト、あなたの事を心配している中年の男性。ここ10年以内に亡くなったみたいで、引きこもっているあなたをなんとか外に出して、楽しいこともあるんだよって伝えたかったみたい。楠さんとどういう関係なのか聞いてみたけど特に何も言ってくれなかったわ。誰か、心当たりのヒト、いる?・・  自分の周りの人で誰かが亡くなっていたとしても、引きこもっていた私には特に知らされることはなかったと思う。だいたい、中年の男の人でかかわりのある人なんて、まったく心当たりがない‥あ、もしかして・・ 「誰だかはわからないんですけど、ここに働きに来る直前に夢みたいなのを見たんです。外に出てごらん、おもしろい体験ができるかもしれない、みたいなことを言われて。その時誰かがベッドに腰かけているような気配がして飛び起きて。もしかしてその時の?」  やっぱりあの時の気配は霊だったのか。誰かが部屋から出て行って、ドアが閉まる音がしたような気がしていたけど、気のせいじゃなかったのか。相良さんの言う、後ろにいるヒトがそのヒトだったのではないだろうか。 ・・どこの誰だかはわからなかったけど、楠さんのことを心配している人がいたのは確かよ。あなたは見守られている。ここまでいろんな事情があっただろうけど、この先の人生はこれまでと違った生き方をしてほしいって、メッセージなんじゃないかしらね・・
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