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「まだ何か心残りがあるんですか?」
・・ちょっとね、気になることがあるから、それを見届けてから天へ上るわ。それも近い将来だから。じゃあ、あなたたちとはここでお別れするわね。鍋島さん、話を聞きに来てくれてありがとう。楠さん、元気で、これからの人生楽しんで生きてね・・
すっと立ち上がったかと思うと相良さんの体は足の方から透けていって、やがて霧のようなモヤッとした渦が立ち上って、姿を消した。
残された私と鍋島さんは、見るともなしに天井を見上げた。
「まだ気になることがあるみたいだけど、でもちゃんと約束してくれたからできるだけ早く解決してちゃんと眠りについてほしいわね」
「そうですね。鍋島さん、ありがとうございました。わざわざ遅番の時間に出て来てくれて、会いたくないだろうに幽霊の相良さんと会って話をしてくれて」
「いいのよ、気にしなくて。仲間同士、助けてあげられる時には協力したいしね。また前みたいに滅多に会うことがないってなるけど、シフトが一緒になったら声かけるわ。さあ仕事に戻りましょう。部屋の仕上がりに時間かかっちゃったけど、村田さんからOK貰ってるから。急いで部屋作ろう」
鍋島さんの後姿を見送ってから私も作業の続きを始める。いつもより体の動きがかるい。
そして窓枠にスッと手を伸ばし、指を滑らせホコリがないか確認する。相良さんの教えはすっかり身についていた。
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