ラブホテルと私

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 始めて見ると、たしかにひとり作業に集中していればその日の仕事はすんなり終わった。 そして他のスタッフとの関係は、仕事の連携以外何もない。  私が働く時間は午後二時から八時まで。早番と呼ばれる朝から午後、夕方までの人たちとはほんの何時間しかかかわらないし、夕方から来る遅番と呼ばれる人たちもまた同じだ。 休憩時間は15分だけだしみんなバラバラだし、わずらわしいおしゃべりにはほとんど縁がない。なるべく他人にかかわらないようにしている陰気な私に話しかけてくる人はほとんどいない、というのが一番正しい状況説明かもしれない。  それでも、時々体を気遣う声をかけてくれたり、社長からの差し入れがあるからと声をかけてもらえたりして、長年引きこもっていた私がここで働きながら四回目の誕生日、29才の誕生日を迎えることが、できたのであった。
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