「重い」

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 夏の陽が昇るのは早い。開けっ放しにしてしまったカーテンから差し込んだ日差しは、強く眩しかった。 「んんん。はぁー……」  美紅は起き抜け早々、大きなため息をついた。彼氏に別れを告げられたのがつい数時間前のことである。いい目覚めなわけがなかった。 「来ちゃったか、朝」  明日の朝なんか来なければいい。落ち込んだまま布団にもぐった美紅はそう思っていた。朝になったら高校へ行かなければならない。高校に行けば、元・彼氏とも対面する羽目になる。今までは顔を見るだけで安心していた相手なのに、なんと悲しいことだろう。  リビングでは母が支度をしている音がした。お弁当を作ってくれる母は、毎朝こんなに早くから起きているのだろう。それに淘汰され、美紅も鎖骨まである髪をきゅっと高い位置で一つに結んだ。  部屋から出ようと立ち上がると、窓から幼馴染らしき姿が見えた。どこかに出かけようとしているようだ。美紅は特に彼を気にすることなく、リビングへと向かう。扉が静かにしまった。   「あら、早いじゃん」 「まあね、今日も学校はあるわけだし」  少し拗ねた口調で母に返事をする。 「今日あんたは休みでしょ、パパのしかお弁当作ってないのに。まさか学校あるの?」  はて。  美紅は思考する。休み。今日は七月十八日月曜日。 「あ、海の日か。なぁんだ……」  心配して損したと言わんばかりの声が出る。母から少し笑われた。    朝の支度を済ませ、マンションのエントランスを通り抜ける。七月とはいえ、六時五十分の街中はまだ耐えられる暑さだった。日焼けが嫌で、えんじ色の長袖ドレープシャツに濃紺のスキニーデニムという格好をしてきてしまったが、このくらいなら熱中症にはならないだろう。  課題を持ってカフェにでも行こう。美紅はそう思って家を出た。三連休だからと多めに課題が出ていた。  カフェまでは歩いてに十分ほど。ゆっくり歩けば、着く頃には開店時間を過ぎる計算だ。わざわざゆっくり歩こうとせずとも、美紅の足取りは重かったわけだが。 「え、混みすぎじゃない?」  カフェに到着すると、席の埋まり具合に驚きげんなりした。落ち込んでいた中、無理に気合いを入れて出かけた。暑い中、十分も歩いて課題をしにきた。それにも関わらず席が空いていなかった。美紅の落ち込みといったらひどいものだった。そこに、美紅より20cmほど身長の高い青年が近寄り、声をかけた。
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