「重い」

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 「カギ、カギ……っと」  美紅はマンションまで到着し、エントランスを通り抜けた。エレベーターを待ちながらカフェでのことを思い耽る。  久しぶりに顔が見られてうれしかった。外見は変わっても、内面は変わっていなくて安心した。やっぱり名前を呼ばれるとうれしくなってしまった。挙げたらきりがないほど、美紅にとっては喜びにあふれた時間だったのだ。 「重いなら半分持つとか絶対意味わかってないし!」  思い出してまた笑う。  エレベーターに乗り込んだ美紅は一人で話し始める。 「物の『重さ』だと思うなんてかわいいとこあるじゃん……! 私の言う『重さ』を半分持つなんて言ったらそれってもう告白だし! ふふ」  エレベーターが美紅の住む五階に到達した。扉が開く。 「……告白。告白?」  角部屋である五〇五号室まで歩みを進める。 「いや告白じゃん!」  美紅は自宅玄関の前で赤面しながら声を上げた。  新たな悩みが生まれた瞬間だった。  こうして、憂鬱な気持ちで出かけた美紅は、新たな悩みを抱え、戸惑った様子で帰宅することとなったのだ。
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