「重い」

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「元気づけたかっただけ、なんだけどな」  蒼悟は家とは反対の方向へ歩きながら、そう口にする。  呼び方を戻すことを許され、浮かれた。悩みを打ち明けられ、心を開いてくれたと感じた。美紅を悲しませる奴が許せなかった。そもそも最初から、久しぶりに会えて気が緩んでいた。  その結果、思わず自分が彼氏だったらと返事をしてしまった。告白まがいの言葉ですらあっただろう。もちろん、好意がないわけではない。ただ、問題があったのだ。  高校に入学する少し前、蒼悟は美紅が自分と距離をおこうとしていると感じていた。 「もう高校生だし私のこと苗字で呼んで?」 「高校の友達を大事にしたほうがいいって」 「課題が忙しくてさ」  どれも美紅の言葉だ。ここまで言われたら、明確に言葉にされずとも自分から離れてほしいことは伝わるだろう。だがそれに異を唱えることなく、蒼悟は美紅がそうしたいならそうするのが一番だと思い、それを尊重していた。それに、嫌われるのが怖いとも思っていた。  以前、美紅に傍にいてほしいと思っていた時期こそあった。今だって、傍にいてくれるというなら蒼悟は手放しで喜ぶだろう。だが、自分から離れたい美紅を、自分に縛るような真似はしたくない。それなのに、本心を少し見せてしまった。  美紅が自分の言葉に悩まないことを祈る思いと、自分が美紅の傍にいたい思いに板挟みになった。  奇しくもそれは、美紅が蒼悟の告白まがいに気づいたのと同時だった。  
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