「重い」

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「告られてたの? テキトーなこと言ってただけ?」  美紅は帰宅後、部屋中を歩き回りながら悶々としていた。  心配性で相手に尽くしてしまう性格、いわゆる恋人への愛が重い美紅。その話を幼馴染の蒼悟にしたなら、「半分持つ」と言われた。最初は気が付かなかったが、帰宅した後でそれが告白ではないかと気づかされた。  思い返せば、彼は自分に置き換えて返事をしていたかもしれない。考えれば考えるほど、顔に熱が集まる。  美紅はしゃがみ込んで、ため息をついた。  同時にスマホが音を立てる。メッセージの受信を知らせるものだった。 「さっきは美紅ちゃんの問題に口出してごめんね、か。そっか。そっかぁ」  安心したはずなのに、落ち込んでもいる自分がすごく嫌だった。捨てたはずの気持ちを引きずっている自分を美紅は嫌悪した。  ベッドに身体を預ける。瞼を落とし、意識を手放した。 「……くれるの? ありがとう」  黒縁メガネをかけた、背の低い男の子が言う。蒼悟だ。  表情が少し硬い。嬉しくなかったのかもしれない。いや、これはかなり喜んでいる。 「えっと、お返し期待してる! じゃあね!」  急に恥ずかしくなって、その場から逃げ出してしまった。  走って逃げた先には、今年同じクラスになったクラスメイトがいた。ぎゅっと抱きとめられ、抱き締められる。 「何逃げてんの。美紅らしくない! 好きなんだ、高杉くんのこと」  好きじゃ、ない。 「好きなんだ! だって渡したんでしょ? チョコ。チョコ!」  好きじゃないって、言ってるじゃん。好きじゃない。苦しい。締め付けないで。 「美紅以外の子からもいっぱいもらってるもんね! たかすぎくん」  知ってる。知ってる! 「私だってあげたし!」  もうやめて! 「やめて……」  美紅は夢から目覚めた。酷い夢だった。  小学五年生のとき、実際に美紅は蒼悟にバレンタインチョコを渡した。美紅以外なら喜びが伝わってこないであろう反応も事実だった。ちょうどあの頃、美紅の周りの女子が男子を異性として意識し始めていた。美紅も例外ではなく、蒼悟に恋愛感情を抱き始めた。  そして夢の中では、仲の良かった友人に責められた。言葉でも攻撃され、身体を締め付けられた。これは事実ではない。それなのに美紅の夢では彼女たちが悪役となったのだ。人一倍責任感が強い美紅は、友人を悪役にしてしまったことに強い罪悪感が湧いた。  夢見の悪さを引きずりながらも、気だるい身体をぐっと起こす。夢のせいかは定かでないが、身体が汗ばんでいた。現在、七月後半。室内とはいえ、汗ばんでも不思議ではない。美紅はデスク上のリモコンを手に取り、エアコンの電源を入れた。隣に置いてあるスマホを少し気にしたが、そちらは手に取ることなくもう一度ベッドに腰かけた。  
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