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次の電車がやってくるアナウンスが流れる。まだ昴夜と一緒にいたいのに、でも七時までには帰らないといけないし、と時計とにらめっこして、次の電車には乗ることにする。
でも、まだしばらく、高校生でいることができるのだから。そう必死にならずとも、来週にはまた昴夜に会える。侑生が岡山から帰ってきて、お土産のきびだんごをみんなで食べようとでも、そう言って。
十四年後に戻る日が、いつやってくるのかは分からない。もしかしたら、私はこのまま、もう一度十四年間をやり直すのかもしれない。そのときは、やっぱり昴夜を助けることができないのかもしれない。
それでも、タイムリープする前の自分ほど、過去への後悔に苛まれることはないのだろう。
「そういえば、さっき話したっけ、バックトゥーザフューチャーの、一巻でめちゃくちゃ好きなセリフ」
「聞いてない、なに?」
「これ最後のシーンだと思うんだけど、”There’s no road.”って一言」
まったく思い出せない。久しぶりに私も見たくなったし、さっき入れ替わりに私が借りればよかった。
「どういう意味?」
「んーとね、デロリアン号ってタイヤ付きの普通の車じゃん。それがさ、ラストシーンだと空を飛べるようになるから、滑走するための“道はない”って博士が言うんだよね」
そう言われると覚えがある。デロリアン号に乗り込んだ主人公が「でも道がないじゃないか!」と困惑したことに、博士がそう返事をするのだ。
「で、これ俺の勝手な感想なんだけど。あれって、第二部だと未来にタイムスリップするじゃん。てことは、未来にはまだ道ができてないから、これから歩いて道を作っていけばいいから、“道はない”って意味でもあるんだなって」
「ああ、なるほどね」
タイムマシンに必要な滑走路と、人生の道をかけているということか。やっぱりさっきDVDを借りればよかった。
「“いま”までには、ずっと歩いてきた道があって、その道を戻って別の道を選ぶことはできないけれど。未来はまだ道がないからさ、あっちにしよこっちにしよって、いくらでも道を選べるんだなーって。そういうのも、これがタイムスリップの王道かーって感動したとこ」
「……いいね。英語で見直してみようかな」
「そうそう、だから英語のほうがいいと思う」
「昴夜、映画は字幕で見る派なんだっけ」
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