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駅に着いた瞬間に電車を飛び降り、反対側のホームへ、階段を駆け上る。電車の扉が閉まることを知らせる音を聞きながら階段を駆け下り、転びそうになりながら、中央駅に戻る電車に飛び乗った。
はやく、はやく。いくら念じたって速度が変わるはずないのに、そう急かさずにはいられない。
昴夜、昴夜、昴夜。十三年前の姿のままの、でも中身は十三年後の昴夜。
斜めに雨粒が走る窓の外は真っ暗で、どこまでも変わらないコンクリートの壁ばかりが過ぎていく。
会わなきゃ、会いたい。話したいことがたくさんある。
〈中央駅、中央駅――〉
反対側のホームは、電車が邪魔で見えなかった。昴夜とわかれてから、十分も経っていない。もう一度あのホームへ行けば、昴夜に会えるはず。
早く、早く。必死に階段を駆け上る。足がもつれて、慌てて手すりを掴んで、それでも上りきって。
その直前、「2.0kcal消費しました!」と見えた気がした。
膝に手をつき、肩で息をしたまま、周囲を見回す。
中央駅の改札口を、人々がせわしなく出入りする――誰も彼もが、その手にスマホを持って。
カバンから取り出したスマホを見た。二〇二一年八月二十五日、午後六時七分。
戻っている。まだ息が整わないまま、その画面を凝視する。タイムリープした日……でも時間は違う。あのときはまだ昼間だったはず、この時刻は、さっきまでいた過去の時間……。
私は、長い夢を見ていたのだろうか。東西線でうっかり寝過ごし、終点までいって、再び折り返し、さらにもう一度……その間に、長く、懐かしい夢を、見ていたのか?
顔を上げたとき、シャンと音がした。頭についているものが揺れたのだと気付いて手を伸ばし――それが簪だと気が付く。
夢じゃない。顔を上げて周囲を見回す。
昴夜はいない。……いるはずがない、けれど。頭の中に、ある光景が浮かぶ。
雷雨と中央駅に向かう東西線の電車と、南北線に乗り換える階段。
昴夜の家に向かう南北線のホーム。
「昴夜!」
突然叫んだ私に、周囲の人々が奇異の目を向けた。それに構わず、南北線の階段を目掛けて走った。
馬鹿げている。こんなこと、馬鹿馬鹿しくて書面にできやしない。弁護士が論理で戦わなくてどうする、そう先輩に笑われてしまうかもしれない。
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