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駆け足で改札を出ようとして、なぜか咄嗟に定期を出すことができた。優しい顔が「いいよ走んなくて」と笑う。
「……ゆ……」
声が出なかった。狼のように流れる厳つい銀髪、それとは裏腹の優し気な双眸と、そんじょそこらの女子なんて目じゃない美人な顔立ち。
「どうした、英凜」
言葉を失ったままの私に、彼は“英凜”と呼びかける。
「なんかあったの?」
私は間違いなく、三国英凜で。
「……ゆ、うき?」
「なに、俺がどうかしたの?」
昴夜の親友にして高校生のときの彼氏――雲雀侑生が、十余年前の姿で、そこにいた。
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