【絶対に秘密】少女の左手は死の香り

黄金の薬指輪

　私は、何の取柄もない。いわゆるモブキャラで、苗字も日本で一番多いとか言う佐藤だし、名前も絵里子だし。
　こんな個性のない名前を付けた両親に苦情を言ったところが、帰ってきた答えはこれだ。
「んなこと言われても……。姓名判断の先生に付けてもらって。平凡でも幸せな人生を送れるようにって」
　はあ、そうですか。
　もう、それ以上突っ込めなかった。

　だから私は、ミステリアスな彼女に惹かれるんだと思う。

　しゃべってみたいー。

　極々当然な欲求が湧き上がってくる。
　もちろん、性的なそれとは違う。何というか、女子高ゆえの憧れというか、理想の自分の姿を彼女に見出したというのか。
　それは分からない。

　だから私は、毎日、彼女を横目でチラ見していた。
　なんせ、一番後ろの窓際に座る彼女の左隣りの席に座っているのが私だからだ。
　ふと、気になる事があった。
（あれ？　彼女の左手……）
　薬指に指輪がしてあった。しかも、眩いばかりに輝く黄金の指輪だ。
（え？　結婚してるの？　しかも、何あの金ピカ）
　不思議ではない。４月の時点で１６歳になっていれば既婚者でもおかしくない。ただ、金色の指輪は、ちょっと趣味が悪いかな。成金ぽい。
　さらに、うちの学校は校則が緩いから、指輪やピアスもOKなのだ。
（それとも、彼氏かな）
　こんな美人、男子が放っておく訳ないなと思った。