横目で見る魔矢ちゃん

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横目で見る魔矢ちゃん

 彼女の横顔は、何と言うか、アメリカ人というかヨーロッパの人の様な顔を想像させるような美しさだった。  その彼女の横顔の奥で開けっ放しになっている窓越しに、散り逝く桜吹雪が校庭をピンクに染めて、それが昼の太陽に反射して魔矢ちゃんの横顔を桜色に染めていた。 (……キレイ……。肌が白いから、余計に桜の花の色が映えるわ)  彼女の横顔は、ギリシャ彫刻とかローマ芸術とか、そんな言葉が似合いそうな立体的な造形だった。鼻筋がスラリと通り、目が切れ長で釣り目がちの二重。唇が今にも弾けそうな初々しい水分を含んでいた。  授業中に、横目で見てしまうのって、仕方がない事でしょ?  これが、私の悪い癖になっていたことが、先生の一言でバレてしまった。 「おい、佐藤!」  散り逝く桜の花のように、私の心も砕け散る一言が、次の瞬間発せられた。 「(すめる)ばっかり見ずに、黒板も見ろよ!」    ドッ!  30人の女子たちが、一斉に笑いをこらえるのが分かった。  次の瞬間、どこからともなく、ヒソヒソ話が聞こえてきた。 「べ、別に見てません!」  スメル、というのが彼女の苗字なのだ。皇帝の「皇」と書いて、スメルと読むらしい。 「恵理子~言い訳は良いよ~」  アハハハハ  同じ中学校の鈴木理沙が突っ込みを入れてきた。この一言で、一応、騒ぎは収まったけど、完全に私が魔矢ちゃんに惚れていることになってしまった。  救いなのは、ここが女子高ってことだけだ。男子がいたら、きっと私はレズビアン認定されていたことだろう。
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