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「いつ止まんの、そのよだれ」
「んふ、よだれって言うな」
史実くんが笑わせてくる。
「早く泣き止めー」
そう言ってポンポン頭を撫でてくる。
「泣かすからじゃん。せっかく史実くんが可愛いって言ってくれた顔、ブスんなってあげられないじゃん」
「ああ。お前が可愛いのは顔だけじゃないぞ。顔も可愛いけど」
「中身も? こんなんなのに」
「はは。そう」
「余計泣くじゃん、こんなん、余計泣く」
タオルから顔を上げられない。史実くんが、甘いんだもん。嬉しくて恥ずかしくて、涙が止まらな……、
「そうなんだ。キス、したかったのに」
っ!!!キ!?
急いで顔を上げる。
「止まりました! たった今、止めました! 」
小さな“あーん”して待つけど、今度は史実くんが爆笑して肘の内側で顔を隠してしまった。笑っちゃいけないと思ってはいるみたいだ。
「おい、早くしろよ。待たしてんじゃねーよ」
脇腹つついて手荒に急かすと、笑い過ぎた史実くんも涙目で、全然色っぽくならないキスだったけど、唇を離す度二人で笑って、くっついては離れて、離れてはくっついた。
「史実くん、大好き」
「うん。……俺も。……好き」
史実くんは昔みたいに反射的に応えず、気持ちがこもった『好き』を返してくれるようになった。
大好き。こんな大好きな史実くんに、私は何をしてあげられるだろうか。史実くんは毎日私がいて生活のリズムが狂って疲れたりしないだろうか。
さっさと身体の距離を取ってしまった史実くんをぼーっと見つめた。
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