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「何だよ、急に大人しくなって」
「あ、えっとね。私、史実くんに何がしてあげられるかなって思って。せっかく付き合ってもらってるのに」
史実くんは真顔になると腕組みをした。
「あのな、『付き合ってもらってる』って言うのやめろよ。付き合うって決めたの俺だし、対等じゃないっぽい言い方すんな」
「……うん」
「俺もお前が好きで、今の関係があるわけで、あとな、お前に何かして欲しいと思ってない。俺も何も出来ないんだから」
「そ、そうだよね。私何も出来ないし、何か目的ならもっと可愛い子とかお金持ちとつき合えばいいんだもんね」
「お前なー。俺を何だと思ってんだよ。第一お前より可愛い奴なんかいないからな。絶対いない。世界中探してもいねー。金持ちには……そうだな、頑張ってなってくれ」
史実くんは、フンッと笑う。
「うん! 頑張ってお金持ちになる! そっか。してあげられることあったじゃーん」
「……いや、やめろやめろ。ジョークだよ、ジョーク」
「私は結構本気」
「はは、じゃあ、なってもらうか、金持ちに」
「そう、それで郊外に大きな一軒家買う」
「んー、いいな。8人くらい乗れるでっかい車買って、夏休みにキャンプとか行きたいな」
8人って子供……?出来て家族でってこと。史実くんの将来のビジョンが幸せそのもので、そこに私がいて、あー……もうダメだ。私、絶対にこれ実現させるからね。
穏やかな未来だ。
「史実くん、勉強しよう」
「唐突だな、お前」
「私、将来絶対お金持ちにならなきゃならないから」
「お。おう。ジョークだぞ、わかってるか? 俺もちゃんと働くし、なぁ」
「うふふふ」
笑いながら、涙が出てしまった。それさ、もう夫婦になってるセリフじゃん。史実くん、ずっと一緒にいてね。心の中で強く思った。
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