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「でもさ、私毎日ここ来ちゃってるからさすがに史実くん疲れないかなって」
ずっ、と涙と鼻水を拭きながら冷静に思う。これ、今までは勉強してた時間だろうなって。
「ふ、今更だな。お前のその気を使ってんのかワガママなのかわからんとこが、面白いよな」
「面白い……? 」
「そ、気を使う割には小学生ぶりの俺んちに突然来て居座るやつな。俺の都合無視でな」
「ああああああああああれは! だって、会いたかったんだもん。史実くんも普通に入れてくれたし」
「ははは、そうだな。何だろう、俺も嬉しかったんだと思う」
他人事みたいに史実くんはそう言った。
「ほんとに? 」
「うん。俺、父親の戸籍入っただろ。もちろん有難かったんだけど、父親はいつも良くしてくれるけど俺に罪悪感を持ってるんだろなって思う。ばあちゃんも、俺の事不憫に思ってるのわかるし、俺も悪いなって思って、それで何となく居心地悪くて」
「そ、でも! それも含めて愛だよ、史実くん」
「うん。そうなんだと思う。きっと、父さんもおばあちゃんも無意識だと思う。俺が一方的にそう感じてるだけかもしれないし。それでも父親はもう再婚してて、成人してない俺の存在ってきっと相手に負い目に感じるんじゃないかなって。家庭環境話すと友達にも気を使わせるだろ。それでも前の生活よりかはマシで、漠然と不安とか孤独とか、何となくしんどいなって思ってた時に突然せりが来て、何だろ同情でもなく、昔のまんま会いに来てくれて、その瞬間だけ難しいことは何もわかってなかった頃に戻って、気分が晴れたんだ」
そう言って史実くんはふわり笑った。
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