鉄壁の鎧

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鉄壁の鎧

 鏡の前、にっこり笑ってみる。笑顔は私の鎧だ。  笑い過ぎてあざとく見えてもダメ。無表情も感じ悪く見えてダメ。ぶりっこもダメ、媚びてもダメ。 「うーん。このくらいが一番感じよく見えるかな」  中学での失敗を繰り返さない。親友なんて贅沢なことは言わないから普通に話せる女友達が欲しい。  出だしは好調だった。最初の1か月。いや、1か月ももってないかもしれない。でも、がんばらなきゃ。平和な高校生活のために。私が彼を思う事だけに集中できるように。  4月の初めはみんな探り探り、関係を築いていく。同中の子も何人かいたけど、もうグループになってるみたいだった。私のところにはすでに二人組になった子が何組か声をかけてきてくれたお陰で比較的大きなグループになってクラスの女子の中心になった。そんなこと興味もないけれど、いわゆる一軍女子ってやつだ。 「窪寺さん、すっごい可愛くて初めて見た時から友達になりたいって思ってたんだ」  可愛いから友達になりたいって、なんだそれ。と思いながらも笑顔をつくる。 「そんなこと……でもありがとう。私も友達になれて嬉しい」  見た目は初対面の人にとってわかりやすい判断材料だと思う。でも、行き過ぎるとそれだけ?って思っちゃう。 「ねぇ、髪の毛すっごい綺麗。シャンプー何使ってる? 」  それから、ヘアオイルは?日焼け止めは?サロンはどこ行ってる?それ、どこで買ったの。かわいーい!私も欲しい。そんな会話が繰り返された。 「えーそのへんの普通のだよ」なんて答えた日には秘密主義だの、ほんとはこだわてるくせに、私には教える気が無いんだとか言われかねなくて適当にブランドを答える。知らん。お母さんが買ってきたやつ使ってるだけだわ。  
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