鉄壁の鎧

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 直ぐにまねされて、「おそろーい」じゃねえわ、真似だよそれ。「ほんとだうれしーい」って言っとけばいいんだけど。  ダメだ。すごくしんどい。でも、へこたれてられない。みんなチェックに余念がないんだから。 「ねえ、せりちゃんってさ、彼氏いるでしょ。絶対いるよね」  ほら来た、恋愛チェック。聞き方がまずおかしい。「彼氏いるの? 」って普通に聞きゃいいじゃんか。いないよって答えたあとの返答も予想できる。 「いないよ」 「えー嘘だぁ。こんなに可愛いのにいないわけないよ」  思った通りでうんざりする。笑顔、笑顔だ。 「ほんとに、いないよ」 「あ、わかった。中学卒業と同時に別れたんだ? 」  わかってないなー。こちとらずーーーーーーーっと片思いだって言うのに。 「ううん。ほんとうにいないの。私、しばらく彼氏はいらないかな」  しばらくってか一生いらんけど、こう言ってたら静かになるでしょ。 「嘘、もったいないよ! こんなに可愛いのに。好きな人はいるんでしょ」  いるけど、言わないわよ。 「いない。今は高校生活始まったばかりで考えられないかな」  しつこーーーい。 「え、でもさ。男子がほうっておかないと思うよ。ほら、しょちゅうせりちゃんの事見に来てるもん」  まずはお前がほっとけよ!と言いそうになるのをこらえて 「あはは、そんなことないよ」  と笑ってごまかした。恋人が死んだので一生彼を思って生きてく体にしようかな。誰も触れられないやつ。めんどくさいな絶対『俺が支える』みたいな奴でてくるじゃん。  男子からはチラチラ見られるわ、わざと大きな声ではしゃいで気を引こうとされるわで散々だった。
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