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仲間外れな二人
「ありえなく無い!?」
高速道路を走らせている営業車の中で、助手席に座る佐倉舞花は叫んでいた。
「まぁまぁ。誰かが犠牲になる時もありますよ」
そんな彼女を宥めているのは、運転手でもある後輩の堂本春樹だ。
今日は、職場全員参加の『花見』をする予定になっていた。
嫌々参加する社員もいる中、舞花は開催される花見を楽しみにしていた。
花見に参加していれば、社長から豪勢な『花見弁当』が配られ、営業部長からの差し入れは、普段自分では手を出せないような『お酒』だ。それが飲めたのだ。
それにも拘わらず、運の悪いことに取引先からクレームがついた為、担当である舞花と春樹は夕方より会社を出発する事になった。
クレーム対応をし、取引先から出発出来たのは18時を回っていた。
花見は既に開始されている。
そして必死に車を走らせようにも、到着する頃には『宴もたけなわ』な状況だ。
「あァァ…っ!!…豪華花見弁当…」
「何か…『花より団子』って、先輩の為の言葉ですね」
後輩のくせに、春樹は舞花に笑いながら、中々酷いことを言う。
「だって、料亭花菱のお弁当だよ!?5000円はするんだよ!?年一の楽しみなのにぃ…」
「そんな舞花先輩に朗報」
舞花の嘆きを未だ笑いながら、春樹は言う。
「…何よ」
「営業部長から『御厚志』を頂戴致しております」
春樹はそう言うと、胸ポケットから白い封筒をゆっくりと引っ張り出した。
その手を舞花はガシッと掴んだ。
そして、叫んだ。
「ありがとう!!最高!!部長!!」
「…俺は部長じゃないですからね」
春樹の呟きは、浮かれた舞花の耳には届かなかった。
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