秘密の部屋

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秘密の部屋

一旦職場に戻った二人は、春樹の知り合いの店に行く事になった。 その店は裏路地にある『Taberna(タベルナ)』というお店だ。 小さなお店で、二人が訪れた時には店内が既に満席になっていた。 「堂本くん?」 「何ですか、舞花先輩。」 入口で立ち尽くす舞花の背中を押しながら、春樹は返事をする。 「…いや、満席じゃん。入れないって」 「そんな間抜けな事はしませんって。とりあえず中に入って下さい。」 そう言われ、座る所の無い店内へと二人は入っていく。 「オーナー」 舞花の両肩に手を置き、更に店内の奥まで進もうとする春樹は、カウンター内にいたオーナーに声を掛ける。 「お?ハルちゃん!!いらっしゃい〜」 笑顔でオーナーは応対する。 「…ハルちゃん❤︎」 「うるさいですよ」 生意気な後輩、春樹は舞花に対して遠慮も無く答える。 「はい、これ使ってそこから入っていって」 カウンター内からオーナーの腕が伸び、その手にはどこかの鍵が握られていた。 「…あ、あと、ゴメン。急ぎだったから『盆栽』しか用意出来なかった。」 それを春樹は「分かりました、ありがとうございます」と言って受け取る。 「はい、舞花先輩、行きますよ?」 「…何処に?」 舞花と位置が入れ替わり、舞香の前に立った春樹は、舞花の手を握って前に進み出した。 狭いお店の中を真っ直ぐ歩くと、突き当たりに扉が二枚あった。 一つは『WC(トイレ)』と書かれている。その隣の扉に、春樹はオーナーから預かった鍵を挿した。 「秘密の部屋ですよ」 来店客が見ているのに、秘密も何も無いだろうに、春樹は楽しそうに笑う。 その扉を開くと、すぐに階段が現れた。 手を引かれながら、舞花はその階段を昇った。
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