名も無き者

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「ナァ、腹ヘッタ、青木」  銅像を見つめる俺の耳元では、相変わらずグーグーとモドキの腹の音が聞こえてくる。 「黒いのでも食べておけよ。美味いんだろ?」 「ダカラ、アレハ苦シクナルンダッテ、言ッテンダロガ!」  最近、なんだか普通に口の悪い人間のような感じさえしてくるコイツは、創始者の銅像をジイッと見て、チッと舌打ちをした。 「強欲ソウナ顔シテヤガンナァ、コノジジイハ!」  俺はその言葉に、失笑して歩き出す。 「いいか? 仕事中は絶対話しかけてくるなよ」 「青木ガ返事ヲシナケレバイイ。ダガ、仕事中ダロウト白イノガ出タラ探シニ行くゾ。オレハ、腹ガ減ッテンダ」  また、耳元で響く腹鳴りを左手で、シッシと払うようにしてすまし顔で歩く。  俺の寿命より、コイツの浄化が先であればいいな、なんて柄にもなく願いながら。
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