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「丸飲ミシテヤルカラナ。痛ミハ感ジサセネエヨ」
自ら寄ってきた白い魂がその言葉に安心するみたいに、モドキの小さな手にふわりとのっかった。
「なあ、お前本気で」
「本気ダヨ」
止める間もなかった。
毛玉そのものが、真っ二つに割れたのかと思うほどの大きな口が、丸ごと白い魂を咥え、その口を閉じる。
ゴクンと飲み込む音が聞こえた次の瞬間、モドキの身体から天に向かって虹色の光が道のように立ち上る。
「ウウ、ウウウ、不味イ、本当ニ不味イ」
苦しそうな声にモドキを覗き込んだら、その顔がほんの一瞬、白髪頭の爺さんのように見えた。
「苦しいのか? おい」
声をかけると、首を横に振って。
「アッタケエンダヨ、アッタカクテ、心ガ痛クナッテ、デモ人間ダッタ頃ニ戻レルヨウナ気ガスルンダ。アー、不味イ。本当ニ不味イ」
モドキの身体を白い光がスウっと抜けて、虹色の道を昇っていき、やがて見えなくなる。
「お前、泣いて」
「ンナワケネエダロ」
グシグシとあわてて擦る赤い目、気づけば白い魂を囲もうとしていた影が小さくなって消えていく。
「なあ、さっき言ったよな? 自分みたいにならないように、って」
「アア? ソウダッケカナ? ダガ、オレハアノ影カラ生マレタ。人間トシテ許サレナイコトヲシテ、影ニ溺レテ、誰カニ引ッ張リ上ゲラレテ、ソシテ……」
いつまで経っても次の言葉を話さない右肩にのるモドキを見ると。
気のせいか、少しだけさっきよりも毛が白くなって丸くなり、瞑った目元を濡らしながら眠りについていた。
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