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「ナァ、腹減ッタ」
灰色の毛玉が、また腹の虫をグウグウと鳴らす。
「そこら辺のを適当に食って、また腹でも壊せば?」
傍目には白衣のゴミを払うような仕草に見えているだろうが、俺の右肩にのるコイツを追い払おうとしているだけだ。
「嫌ナコッタ! 見タトコロ、黒バッカリジャネエカ! 黒イノハ、美味イ癖ニ、胃モタレガスルノ知ッテテ言ッテヤガルダロ! ナァ青木、トットト真ッ白ナノ、探シニ行コウゼ」
「あのさ、どうでもいいけど、院内で話しかけるなと言ってるだろ」
人には見えないこの灰色に薄汚れた生き物。
生き物? いや、コイツは生きてなどいない。
名もなき、死神モドキ。
コイツが苦しがっていたのを、たまたま俺が見つけてしまい、声をかけてしまったことを悔いる。
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