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薔薇のエリアを抜けると、次は季節のコーナーとして多くのひまわりが咲いていた。
「単純だけど、ひまわりを見ると夏って感じがするよね」
「そうですね。明るくて元気なイメージの花なので」
「あ、見て一ノ瀬君」
真ん中が茶色ではなく、緑色のひまわりを見つけて指さながら近づいた。
「凄い、茶色以外のものもあるんだ……綺麗だね」
ひまわりに夢中になっていると、カシャリと音が聞こえた。一ノ瀬君の方を見れば、こちらにカメラを向けていた。
「あ……すみません。先輩が可愛すぎるので、つい撮ってしまいました」
可愛すぎる……?
それってつまり、幼く見えるってことかな。でも確かにひまわりは小さい子のイメージがなくもないかも。それならありがとうっていうのもおかしな話か。
そんな風に思いながらも、勝手に撮られたことには何も感じていなかった。人を撮るのも立派な写真なので。
ふと、一ノ瀬君が私を撮った写真が上手だったのと、この前撮った写真が茶道部の友人の写真だったことを思い出す。
もしかしたら人を被写体にするのに長けているのかもしれない。そう直感的に感じた私は、一ノ瀬君に提案をした。
「私で良ければ被写体になるから、好きに撮っていいよ。あ、止まった方がよければ声かけてね」
「……いいんですか?」
「うん。前に肖像権の侵害は駄目って言ったけど、今回は私が許可出してて無断じゃないので」
「それなら……ありがとうございます」
「撮影会は練習だからね。お互いに頑張ろう」
「はい」
一ノ瀬君と頷き合うと、二人で写真撮影を始めた。私は先程と変わらず、ひまわりを中心にカメラを向けており、時折一ノ瀬君の方向からカシャッと音が聞こえていた。
ひまわりと言えば、青空によく合う花。これは画角に拘りたいところ。
しゃがんで下から撮って見たり、空に向けて撮ってみたり、あえてひまわりをアップにして空をぼかしたりと色々と挑戦しながら撮影をしてみた。
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